『ろここ通信』最新号 The latest edition
1987年から紙媒体で発行してきたニュースレター『ろここ通信』。いよいよこの103号よりWeb版のみになりました。紙媒体から移行して下さっている皆様には、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。(記事はすべて七瀬あゆこ自身による記述です。)
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ろここ通信 No.103 ~ Since 1987 ~ Sep.2024 NEW!!
103号にアクセスしてくださり、ありがとうございます。紙媒体発祥のこの通信も、ついにWeb版のみになり、一本化初めの一歩となりました。
今回はトップページに掲載してきたブログ記事と、旅(音楽フィールドワーク)の記事から最近のものをピックアップして加筆したもの、さらには新たな書き下ろし記事もあります。どうぞ最後までおつきあいください。
◆アフター・コロナに思う
我々の業界にとってなかなか過酷だったコロナ禍を、何とか抜け出そうとしているこの頃ですが、変わってゆくもの、変わらないもの、それぞれを見つめてゆくこの時期の作業は案外大事なのかもしれません。先日、コロナ社会で大きな犠牲を被ったであろう二十歳前の若い人たちと話す機会があったのですが、彼らは彼らでこの現実のなかで、自分の軸を築くべく果敢に挑戦しているんだなぁと、尊敬の念を持ちました。日本、捨てたもんじゃない!
コロナ社会で発展したのがオンライン。私にとっては、楽譜ユーザーの方々からのたくさんの動画を目にする機会が増えたことを、本当にありがたく思っています。
♥ Special Thanks ♥ YouTube投稿、拝見しています!
「八月のねがい」大人気なんだな~^^、ドヴォルジャーク、待ってました!おっ、セヴラック初登場! …なんてつぶやきながら、一所懸命見ていますよ~^^。
(曲名だけでなく、作曲者や編曲者名もクレジットして下さると探しやすいです^^。どうぞよろしくm(_ _)m。)
◆新刊楽譜のご案内 ムラマツ オリジナル シリーズ Vol.86
♪ピオニー・サンバ(七瀬あゆこ) フルート二重奏
♪ヘンゼルとグレーテルの森へ(E.フンパーディンク/ 七瀬)フルート1&2,アルトフルート, ピアノ
全曲スコア,パート譜付き 税込¥1,650
お申し込みは、村松楽器 03-3367-6000 まで!
6月20日付で発行された新刊楽譜 ムラマツ・オリジナル・シリーズ86。
今回も、ムラマツさんの「紳士的な社風」に支えられ、一同一丸となっての「伝統のチームワーク」で、頑張って仕上げました。関係者の皆様には、今回も本当にお世話になりました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。
私にとってはこのシリーズ27作目になり、本当に長年ムラマツさんにはお世話になっていることになります。今回は特に、ムラマツさんの創業100年を記念した昨年12月の演奏会で、N響トリオによるアンサンブルで初演していただいた編曲作品「ヘンゼルとグレーテルの森へ」がメインになっていますので、大入り満員だった会場に詰めかけてくださった皆様には、あの時のあの曲がこのシリーズに登場してお手許に届いた感じになります。
アルトフルートがこのシリーズに登場するのは初めてですが、ユーザーの皆様には、ちょっと贅沢な編成を楽しんでいただければと思います。
欧州ではクリスマス時期に家族で楽しむ定番オペラ「ヘンゼルとグレーテル」のエッセンスをギュッと抽出して、メドレー的な楽しさも盛り込みながら、原作のドイツ音楽らしい重厚感も味わえるようになっています。今年のクリスマスには、たくさん演奏して頂けるといいなと期待しています。
それとは対照的な、明るく軽やかな二重奏のオリジナル曲「ピオニー・サンバ」は、たった二本のフルートから広がるサンバの世界。フルート・アンサンブルでなければ出せないエレガントなサンバでこの夏を彩って…という気持ちでしたが、今年は猛暑に台風の夏になり、サンバで元気チャージ、だったかもしれませんね。
◆トップページのブログ「ブラフの丘から…」より
10年あまり前から愛用している、デンマーク製の腕時計スカーゲンSkagen (シンプルでリーズナブルという北欧らしいスタイルの知る人ぞ知るブランドです。写真1)。
日本には直営店が少なくなっているのですが、先日関東エリア唯一の直営店である銀座のお店に行ってきました。とても優秀な店員さんが接客してくださり、楽しく充実したひとときでした。ちょっとエキゾチックな顔立ちだけれど、ぱっと見には日本人かなと思うような表情や気遣いに加えて、見事な日本語を使いこなしていらしたのですが、やはり外国出身の方かなと思い、帰りがけにそっとお国を伺うと、ミャンマーだとのこと。
日本が好きで、学生時代から日本語や日本の文化を勉強されてきたのだと。すごいな、ありがたいな、と思いました。増え続けるインバウンド需要にはうってつけの人材ということでしょうが、何となくその自然体な感じがダイバーシティ先進国デンマークっぽいなと。
これからの我が国は、こんな日本を愛してくれる外国出身者の方々の知恵から学びながら、豊かに歩んでいかなければいけないなと思いました。(2024.5.12)
◆トップページの 音楽フィールド・ワーク記事 より
オーデンセ Odense(デンマーク)(2012年10月の蔵出し画像から)
デンマークの音楽作品をベースにした楽譜「みにくいアヒルの子」(ムラマツ・オリジナル・シリーズ44)でも取り上げた、アンデルセンの生誕地であるオーデンセ。そのたたずまいからは「小さな大国」デンマークの自由平等を重んじる人間観や、質素で心豊かな暮らしから垣間見える幸福感のヒントが感じ取れるように思っています。
(写真2:旧アンデルセン博物館所蔵の、アンデルセン自身による切り絵作品)
子ども好きのアンデルセンは実は手先が器用で、切り絵も得意だった。これはその代表的なもので、博物館に保存されているだけでも約1500種類もあるという。アンデルセンは、子どもたちや後援者の前で即興的にお話を作り、自ら演じながら切り絵を作ったと言われる。初めは俳優志望だった彼らしく、切り絵は常にストーリーと共にあったといえ、小さな総合芸術の一部という見方もできる。
(写真3:オーデンセ旧市街にある救貧院の建物。アンデルセンゆかりの場所として保存されている。)
オーデンセ川の洗濯場近くにある、救貧院(ファッティゴーデン)。今ではいろいろな格差に対して進歩的な思想を持つ国の代表ともいえるデンマークでも、アンデルセンの生きた時代は、貧富の格差が大きかった。町の中心部にある正規の学校に入ることのできなかった貧困家庭の子どもたちは、ここ救貧院で劣悪な教育環境のなか、読み書きを習ったが、アンデルセンもその一人。私たちは成功物語というと、その華やかな面ばかりに目が行き羨ましく思ってしまいがちだが、その下にはたくさんの挫折や苦悩という土台がある。「何くそ」とばかり、苦労を重ねながら自分の才能を開花させていったアンデルセンの気持ちに思いをはせる場所。
------ コロナ禍の間、旅の記事も蔵出し画像でフォローしていましたが、近々海外渡航を再開しますので、10月からはトップページで「今」を感じるタイムリーな画像をお届けできればと思っています。
NEW!! ◆BGMとマルチタスク
マルチタスクという元々はコンピューター用語を、最近あちこちで目にします。研究成果の著しい脳科学の分野などでも、脳が一度にたくさんの作業をこなすことを指し、これが実は脳の使い過ぎを招き、さまざまな心身の不調の元凶なのだとさえ言われるようになりました。なるほど。効率を上げるための「ながら○○」は、思いのほか消耗しているのだと。確かに時短の極みのマルチタスクだとすると、ちょっと世知辛い感じがします。
本来リラックスするために流しているつもりのBGMも、実は厳密にはマルチタスクなのだとか。人はBGMを潜在的に「聴いて」いるという説には同感する私ですが、これは耳からの情報にどのくらい敏感かどうかにもよるかもしれません。前号で触れた作曲家中田喜直先生は、社会活動家の顔もお持ちで、実はBGM反対論者でいらしたと聞くと、これもなるほどと思えます。私もカフェなどで静かに流れるジャズなどには、くつろぐ感覚を覚えますが(聞き流してはいない)、同じ音楽でも音量が大きめだとイライラしてきます。
私は車の運転が結構好きなのですが、このマルチタスク論を知ってから、ためしに車の中で音楽を聞くのをやめてみました。音楽に気を取られるリスクに思い至ったからです。するとこれが想像以上にすっきりした感じがあって、いいのです(ただし眠くなったときは、ラジオを大きめに流しますが)。情報過多が想像以上に脳を圧迫するなら、情報も断捨離して本当に必要なものを選んでゆく。これは私のような中高年世代に限らず、コロナ禍を経験した時代のなかの確かなひとつの潮流になってきていると思います。
(2024.9.5)
『ろここ通信』 バックナンバーより from the back issue 102
ろここ通信 No.102 ~ Since 1987 ~ Mar.2024
元日の災害という驚愕の出来事で始まった2024年ですが、まだまだパンデミックも終息したとはいえず、加えて世界各地の紛争など、なかなか難しいこのごろですが、いかがお過ごしでしょうか。それでも春は確実に歩みを進め、街に人々の姿が戻り、音楽の現場も日常を取り戻しつつあります。コロナ禍で発展したオンライン動画も、ライブ感のあるものが増えました。
前号で予告しました通り、この102号をもちまして当『ろここ通信』は、公式サイト内のWeb版に完全移行いたします。紙媒体を通して長年ご支援くださいました方々への尽きぬ感謝を胸に、新たなステージへ進む決意でおります。インターネットのWeb閲覧は少しなら、という方々には、ぜひともアクセスを試みて頂ければと思っています。パソコン、スマートフォンどちらでも閲覧できます。
Web版のブログコーナーでは、毎年年末にマイ漢字を二文字選んでいます。昨年は「百」と「甦」。これを実感できるシーンはいくつもあったのですが、その中でも象徴的な出来事「中田喜直生誕100年展」についての記事を、以下に記事としてご紹介しています。
この展覧会では、音楽とは別の話ですが、中田氏が運動神経抜群でスキーは何と57歳でSAJ(全日本スキー連盟)の1級に合格された腕前であることが紹介されていて、感嘆しました。私も昔少しだけスキーをかじったので、これは本当にすごい、と。身体能力ばかりでなくチャレンジ精神というのか、「作る人」は一生挑戦し続けるのだなと感じ入りました。雪といえば、北陸富山出身のあるスタッフの方が、拙作の「雪のノスタルジー」(ムラマツ・オリジナル・シリーズ80収録)を聴いて、故郷の雪景色が浮かんだと言ってくださったことが、この時期しきりに思い出されます。当該地の復興と、心穏やかな日々が戻ることを、心からお祈りしています。
◆プレミアムコンサート N響トリオ×ムラマツ (ムラマツフルート100周年記念特別企画 2023.12.3 東京オペラシティ)で新作初演
2023年は、長年お世話になっている楽譜出版元に当たるムラマツさんの創業100年ということで、年末にはN響トリオという国内ではトップクラスのメンバーによる公演が開催されました。新作「ヘンゼルとグレーテルの森へ」は、フンパーディンクのオペラをフルートが活躍する室内楽に仕立てて、オペラの世界を楽しむことを意図したもの。こういう元々フルートの作品がほとんどない作曲家の場合は、さあアレンジャーの出番、ということで書き下ろし初演となりました。
作編曲者にはいろいろなタイプがありますが、私は自分の譜面が様々な音楽的個性を備えた演奏者の中で、その個性と折り合いながらどのように息づき育ってゆくかということに最も関心があるので、リハーサルに立ち会っても、いわゆる「注文をつける」ということはほとんどありません(もちろん、奏者が譜面をしっかり読み込む力を備えている場合ですが)。質問にはお答えしますが、今回も、こちらからは「何か苦情はありますか?」と聞くだけで(一同クスクス笑いが出て、和やかに)、ほぼすべてお任せしました。
本番は、リーダー格の甲斐雅之さんの心温かなお人となりがにじみ出るような音楽のトーンに加え、細部の処理もそつのない仕上がりで、さすがはアンサンブルのプロ中のプロ。クリスマスカラーで衣装を揃えておられるところからは、気合の入った熱演だったことも想像して頂けるでしょう。写真の表情からは、お会いしたのは2回だけとは思えないような親密な一体感が感じられると思いますが、音楽の力とはこういうことかと、私も多くを学びました(写真(1)は、左から第1フルート中村淳二、アルトフルート梶川真歩、七瀬、ピアノ石橋尚子、第2フルート甲斐雅之)。
また、この公演はチケットが早々に完売となり、やはりさすがは「フルート大国日本」を牽引するムラマツさんならではのことでした。
◆細幅鍵盤ピアノで「魂の邂逅(かいこう)」 ----- 中田喜直 生誕100年展 (Comments 「音楽物思い」より)
コロナ禍の行動規制が解けて間もない2023年夏、作曲家中田喜直(1923~2000)の生誕100年を記念して、その功績をしのぶ大規模な展覧会が、氏とゆかりの深い横浜で催されました。
「夏の思い出」や「ちいさい秋みつけた」など、誰もが口ずさんできた美しいメロディーは、今もなお日本人の心の核心をゆさぶるような、世代を超えた愛唱歌と言えると思います。たぐいまれなメロディー・メーカーであると同時に、氏が実は藝大時代はピアノを専攻し、ピアノにはとてもこだわりがあったことは、知る人ぞ知る事実かもしれません。
展覧会の入口に置かれていたのは、氏が提唱した「細幅鍵盤ピアノ」。ピアノが量産される時代になる前は、ピアノの鍵盤の幅(大きさ)が、実は楽器によって違っていたことも、あまり知られていませんが、今は規格サイズに手を適応させてゆく必要があるわけです。つまり十分な手の大きさがあるかどうかが問題で、日本人はこの条件を肉体的に満たすのがなかなか困難であることから、「手が小さい」ことを「劣っている」こととみなす傾向は今も根強くあります。小柄だった氏もこの問題を抱えておられたわけですが、そこを逆手にとって、楽器の方を日本人の体格に合わせてはどうかという提案をして、実際に規格より細い幅のピアノを作ってしまったというわけです。私はぜひこれを弾いてみたいと以前から強く思っていて、ついにその機会が訪れました。
ここで恥ずかしながら告白する必要があるのですが、中田喜直先生といえば、私が中学の時にピアノ伴奏で出場したNHKの合唱コンクールの最終(録音)審査の審査員でいらして、その時私の演奏に好意的なコメントをしてくださったという、まさに私の人生が大きく動いたご縁があるのです。この細幅鍵盤ピアノは、草津の別荘に置かれていたものだそうですが、よく手入れがされていて、やわらかで芯のある音。よく耳をすまして弾けば、自然にそのよく伸びる音に導かれて、素敵な音楽になってゆくような感じがします。「ちいさい秋見つけた」を弾きながら、ああ、これが中田先生のピアノの音かと、生前お会いすることはなかったけれど、やっとお会いできたような気がして、気づけば昔のコンクールの課題曲の冒頭を弾いていました。「先生、私覚えていますか…」
音楽の力、その不思議さにずっと導かれて生きてきたのかもしれないと思いながら、切ない素敵なひとときが過ぎてゆきました。(2024.1.31) (写真(3):1オクターブの幅が、現在の規格サイズより約1センチ狭い細幅鍵盤ピアノ)
以下は、紙媒体読者の皆様にはおなじみの、懐かしくも貴重な情報です!
◆オンラインで復活!「(五代目)寶井馬琴 独演会」 2024.3.1~3.31 国立劇場 くろごちゃんねる (有料配信)
紙媒体読者の方々にはきっと懐かしいお名前である、柳瀬丈子さん(「音楽で料理!」公演(1999年)で朗読での出演ほか、作詞者としての共同作品も多数あり)。そのお父上である、講談師のレジェンド 五代目寶井馬琴(たからいばきん)師匠(1903~1985)の独演会がオンラインで復活します。
私は馬琴師匠とは直接お会いしていないのですが、ご息女の柳瀬さんとは公私にわたる長いお付き合いで、その精神的な背景にはお父上の生き方の影響が強くあることを感じながら、私もたくさんのことを吸収してきました。現在閉鎖中の国立劇場の膨大な資料から生まれた独演会オンライン復活は、長い間待たれていた企画であり、私もワクワクしています。今回の配信は、代表的名演から三演目。各500円、詳細は以下のサイトをご覧ください。
「ミレール 国立オンライン劇場」の配信販売リンクはこちらです。https://mirail.video/publisher-title/493
◆紙媒体ファイナルに寄せて
2011年より紙媒体業務を委託している業者さんの担当スタッフも三代目になりました。最近はこの若きホープYさんをすっかり頼りにしてきましたが、紙媒体終了を受けて、彼女の「寂しいですね…」という一言が心に響きました。もちろん業者さんとはこれからも様々な形でお付き合いが続くのですが、いつも必ずきっちり仕事をして下さった歴代担当者および社内スタッフの皆さんに、心からの感謝を捧げます。
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『ろここ通信』 バックナンバーより from the back issue 101
ろここ通信 No.101 ~ Since 1987 ~ Aug.2023
盛夏の候、地球の温度上昇を複雑な思いで実感するこの頃です。前号100号への祝福をたくさん頂き、ありがとうございました。思えばこれまでいろいろな活動方針の転換もあり、楽曲の作風も大きく変化し、出会いも別れもたくさん経験しましたが、変わらず応援して下さって来た方々への感謝の思いは、言葉で語りつくせないものがあります。それを100という数字が物語っているのかもしれません。100と言えば、今回は「もう一つの100」が登場していて(下記)、面白いなぁと思います。
コロナ禍の様々な困難を抜けるべく、少しずつ新たな方向を探りつつある今年、春には主催公演のマネジメント業務でお世話になってきた音楽プロデューサーYさんのご縁で、みんなの音楽祭 音とひと(多摩ユースオーケストラ25周年記念演奏会 3/27~29, パルテノン多摩)で、拙作をいくつかまとめて演奏して頂きました。若きフルート・トリオ「パレット・イリゼ」の演奏はとてもレベルが高く、しっかり時間をかけて準備を重ねてこられたその成果を十分発揮されて、気合の入った演奏の連続に、とても「熱い」本番となりました。私も作曲者としての立場や責任について、彼女たちから学ぶことが多く、改めて身の引き締まる思い。とても充実した3日間でした。私も舞台に登壇して演奏者とトーク。内容はフルートという楽器やオリジナル曲(「コリア風デリカート」、「八月のねがい」)についての話題が中心でしたが、そこでは全く触れなかったにもかかわらず、編曲の可能性について、何人もの方からポジティブな感想を頂いたことに、驚いています。(編曲作品からの演奏は、「フルート・トリオのための「鱒」」、「悲愴ソナタ2楽章」。)
また、私にとっては初めての試みだった、バレエ(多摩バレエスクール)とのコラボ。多摩ユース・オケとは何度も共演を重ねてきた信頼関係の土台ゆえか、生演奏とダンスがとても自然に共存する舞台となったことにまず感動、そして感謝。とくに、拙作「桜シャンソン」に振り付けが施されて踊りの世界が広がる姿には、作品が独り歩きを重ねて、大きく成長した感があり、目をみはるものがありました。
(下に写真をアップしました。ソフトの関係で画像が小さく見えますが、クリックすると拡大して大きな画像が見られます。)
この公演では、演奏者との対談のなかで、「七瀬さんにとって、フルートとは何ですか?」という質問を頂きました。これはひとことで言うのはとても難しい質問なのですが、こんなことをお話ししたなぁと思い出し、Web版限定記事にまとめてみました。
◆フルートの不思議な面白さ Comments ← click! 「音楽 物思い」 コーナーへ
◆「雑食性」という武器 Comments ← click! 「編曲のおはなし」 コーナーへ
------ ------ 新刊楽譜 ◆ ムラマツ オリジナル シリーズ Vol.83 ◆ ------ ------
(ブルクミュラー作品100へのオマージュ)♪フルート・デュオのための「やさしい花」(ブルクミュラー/ 七瀬)
(ブルクミュラー作品100へのオマージュ)♪フルート・トリオのための「舟歌」~「貴婦人の乗馬」 (ブルクミュラー/ 七瀬)
♪舞姫 フルート二重奏(七瀬あゆこ)
全曲スコア,パート譜付き 税込¥1,650 お求めは、村松楽器 03-3367-6000 まで!
今年も長年お世話になっているムラマツさんの新譜を担当させていただきました(気が付けば、このシリーズ26冊目!)。折しも2023年は、村松フルート生誕100年という記念イヤー。私も感謝の気持ちをこめて100という数字にちなんだ選曲を提案したところ、「粋な計らい」と喜んで頂き、関係者一同「伝統のチームワーク」で心を合わせて仕上げることができました。世界屈指のフルート人口を誇る日本ですが、同時にピアノの初歩も経験されている方が多いはず。ブルクミュラー(昔はブルグ…と濁った)を昔練習した記憶にアクセスして、フルートの世界でも、ちょっと大人な味付けで楽しめたら、というわけです。
オリジナル曲「舞姫」は、昔々発表した歌の曲のフレーズをベースに、新たにオリエンタルな気分を増進させて、フルート版に書き下ろした曲。途中のちょっとミニマル・ミュージック風のところでは、ダンサーたちの「百花繚乱」が一瞬、夢のように広がります。フルート・アンサンブルで奏でる「100づくし」の世界。楽しんでいただけると嬉しいです。
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楽譜ユーザーの「フルート・デュオ れこると」様より、CD(2/1発売)に、拙作「風のインテルメッツォ」(フルート二重奏、ムラマツオリジナルシリーズ68)を収録した旨お知らせいただき、録音を聴かせていただく機会がありました。
れこるとさんは、中堅世代のフルート二人組で、動画なども積極的に活用され、たくさんの種類のフルートを駆使しながらフルート音楽の可能性を追求される一方で、様々な音楽性のなかでも、優しさや音楽の本質的な楽しさを大事にしながら、「れこるとワールド」を、様々な形で実現されています。れこるとさんが拙作を演奏して下さっていることは、YouTubeなどで拝見していましたので、楽しみに耳を傾けると…ゆったりしたテンポで、しっとりした内省的な音楽に仕上がっていて、風の多彩な表情を繊細に紡ぎだされているニュアンスからは、私も気づかなかった曲の魅力が発掘されている感じがあります。
そして、見事に息の合ったアンサンブル。そこからは、この曲を心から愛して下さって、たくさん演奏されていることが伝わってきて、作曲者冥利に尽きる思いでした。
CD ●「笛の音 たくさん収穫できました! フルート・デュオ”れこると”」
(レーベルSymphony/ 製造番号 SYM-0004) (税込 2,000円)
こちらのサイト(送料無料)から購入できます。https://satoflcd.thebase.in/items/70240105
また、Amazon、楽天、HMV、タワーレコードからも購入でき、音楽配信サービスのiTunes、Spotify、Apple Music、LINE MUSIC、Amazon などでも、ダウンロード販売されているそうです。れこるとワールドによる風の世界、ひととき耳を傾けてみてくださいね。
追記:れこるとさんは、上記の新譜♪舞姫 も、ライブ演奏を動画にさっそくアップして下さっています。https://youtu.be/1m3xutRtE2o
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『ろここ通信』 バックナンバーより from the back issue 100
ろここ通信 No.100 ~ Since 1987 ~ Aug.2022
Web版にアクセスいただき、ありがとうございます。
最新号、気づけば100号になりました。日頃あまり数字にこだわらない方なので、切りのいい数字でもスルーしようかと思っていたのですが、「100号ですね」と言って下さる紙媒体読者の方もあって、ささやかな特集を試みました。
今年も「世界のムラマツ」さんの揺るぎない存在感のおかげで、「ムラマツ・オリジナル・シリーズ80」の楽譜が刊行(6月)となりました (写真 1) 。私にとってはこのシリーズ25作目となり、ずっとお世話になっている編集者O氏率いるスタッフの皆さんとの連携も、自慢のチームワークといえる域になってきたと思え、感謝にたえません。
今回は、フランス音楽が中心ですが、ドビュッシー生誕160年など、記念年にちなんだ内容です。「パスピエ」(ベルガマスク組曲の中の1曲で、有名な「月の光」の次に配置されている)は、まさにアレンジャー魂をそそる曲。3本でまとめるのはちょっと気合が要りますが、ぜひ挑戦してほしいと思っています。セヴラックは最近ピアニストの間で人気が出てきて、再評価の流れのなか、編曲作品も増えています。両方とも舞踊のリズムがベースになっている、ノリの良い曲。オリジナル作品「雪のノスタルジー」は、’91年に歌として発表した作品の改編版ですが、「郷里の雪景色が浮かんだ」という編集スタッフの感想に気を良くして、元の歌詞の内容紹介をやめ、一期一会の雪の情景を期待することにしました。
Web記事からは、嬉しい本の刊行のお知らせです。トップページのブログ・コーナー"ブラフの丘から"に発売と同時に掲載したものを、独立した記事にまとめました。往年の小泉ファンでなくても、力づけられる名著、ぜひご一読下さい。
主催公演のご縁で頼りにしている音楽プロデューサーYさんの地元多摩センター駅前にある「パルテノン多摩」で、来年3月にリニューアル公演シリーズが開催されます。「コロナ禍の音楽への思い」をテーマにした演奏会では、拙作のフルートアンサンブルも登場するとのこと。さらにはバレエとのコラボもあると聞き、初めての試みに今からワクワクしています!
♪ロマンティックなワルツ Valse Romantique (セヴラック/ 七瀬) フルート二重奏
♪パスピエ Passepied (ドビュッシー/ 七瀬) フルート三重奏
♪雪のノスタルジー Nostalgia in a Snow Scene (七瀬あゆこ) フルート三重奏
全曲スコア,パート譜付き 税込¥1,650 お申し込みは、村松楽器 03-3367-6000 まで!
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◆音楽とフィールドワーク Field work ←click! 「フィールドワーク 私のお手本」 コーナーへ
~:~:~ ろここ通信 100号 記念特集 My Special Thanks to You All ~:~:~
「わぁ~、懐かしい!!」古くからの紙媒体読者の方々には、そのように感じていただけるかもしれません。
当通信は、2003年までこのような手書きのハガキ通信でした( 写真 3 ) 。手作りのぬくもり感、遊び心のある内容とレイアウトという路線で、たくさんの支援者の方々とのご縁を育ててくれました。
例をあげるときりがないのですが、なかでも、カラーのイラスト入りハガキで毎号必ず一番乗りにお返事を下さった自称「ミスター返信」さん(当時70代、元大学教授)のお便りや、パントマイミストのKMさんからの温かく力強い励ましの言葉は、今も宝物です。今年1月に97歳で他界された池 明観さん(宗教哲学者、元東京女子大学教授)も、当初からの貴重な支援者で、「韓国のお父さん」と呼べる存在でした。
一方で、発信するという行為の様々な側面を、身をもって知る機会でもあり、コミュニケーションのあり方について厳しく鍛えられたこと、それがもしかしたら一番の収穫だったかもしれません。ネット社会の今、SNSのトラブルなどは、残念ながら当然起こりうることと予想できました。
親しみやすさというカラーは意図したものですから、それにつられて「気軽にできそう」「アイディア頂き!」と思う方々も出てこられ驚きましたが、実際のところ、遊び心と遊び半分ではかなり隔たりのあるものです。
情報の質と量を見直してゆく必要が出てきてから、今のスタイルになりましたが、紙媒体の印刷と発送など諸業務を委託している業者さん(世界中にフランチャイズ支店を持つ、アウトソーシング大手のM社)の優秀な担当スタッフの方々に背中を押されて、100号まで来られたことに感謝しています。
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『ろここ通信』 バックナンバーより from the back issue 99
ろここ通信 No.99 ~ Since 1987 ~ Aug.2021
最新号のWeb版にアクセスしてくださり、ありがとうございます。
長く続くパンデミックを嘆いてばかりもいられず、まずは身を守りながら今できることをやっていくしかないと、私も考えています。皆様がこれからもお元気で過ごされますことを、心からお祈りしております。
今年も「ムラマツ・オリジナル・シリーズ」の楽譜が刊行となり、これは「世界のムラマツ」さんの底力ゆえのことと感謝の気持ちでいっぱいです。音楽の役割、楽譜と言う媒体の意味について、改めて思いを巡らせるこの頃ですが、今回の楽譜は、それぞれがこの時期、自分と向き合う時間を持つ機会が増えていることをイメージして、喜びと悲しみというテーマにしました。バッハの「羊は安らかに草を食み」は、人間が本能的に持っている幸福感のような気分を思い起こさせる曲。どんな境遇にあっても、希望を抱く自由だけは全員に許されていると思うのです。オリジナル曲の「桜シャンソン」は、’87年の最初の主催公演で、歌で発表したもので、今回フルート版にヴァージョン・アップしました。こういう昔のネタが、むしろ今になって輝きを放つ気がしています。
------ ------ 新刊楽譜 ◆ ムラマツ オリジナル シリーズ Vol.77 ◆ ------ ------
♪初めての悲しみ Erster Verlust (シューマン/ 七瀬) フルート二重奏
♪羊は安らかに草を食み Sheep May Safely Graze Cantata BWV208 (J.S. バッハ/ 七瀬) フルート三重奏
♪桜シャンソン A Chanson of Cherry Blossoms (七瀬あゆこ) フルート二重奏
全曲スコア,パート譜付き 税込¥1,650 お申し込みは、村松楽器 03-3367-6000 まで!
以下、このサイトに定期的にアクセスしていただいている方々にとっては、ほとんどが既読の記事になりますが、コロナ禍の日々であっても自然の営みは確たる歩みを続け、時が刻まれてゆくなか、いろいろな模索を続けながら投稿してきた記事の中から、紙媒体読者向けに抜粋した記事をご紹介したいと思います。
まずは、長年連載してきた「Gao Forever! ~「育ての親」齊藤賀雄さんの思い出」。本編を2019年に終了した後、没後10年を迎えて書いた「Gao Forever! ちょっと長めのエピローグ」です。本編には書けなかったちょっと切ないエピソードがこぼれ出ました。(初出の昨年11月の記事を、今回ご紹介するに当たって、少し修正しました。)
そして、2021年は東日本大震災から丸10年。メモリアル・デーの3月11日前後には、巷で情報合戦のようになりましたが、その時期に冒頭のブログに載せた記事を少し修正した「音楽にできること ~ 東日本大震災から10年」をご紹介したいと思います。「もう8月なのに、タイムリーじゃない」なんて思われた方は、ちょっとドキッとするかも…!
また、このサイトのトップページの旅の記事 ”♪♪ Field work Bergen (Norway) ♪♪ ”では、2012年のベルゲン(ノルウェー)での、作曲家グリーグについての取材の様子を、蔵出しシリーズで連載していますが、その中からまさにグリーグの息遣いが感じられる画像と記事をピックアップしてニュースレター向けに編集してみました。
お楽しみいただければ幸いです。
◆Gao Forever! ちょっと長めのエピローグ Gao Forever! ← click! 「Gao Forever! ~Epilogue~」へ
(写真1) 愛用のムラマツ・フルート。'89年11月、私の読響アンサンブルの事実上デビューコンサート(長野県松本市)で、この楽器も初のお目見えをした。
◆音楽にできること ~ 東日本大震災から10年 Comments ← click! 「音楽 物思い」コーナーへ
◆作曲家グリーグの音楽を肌で感じてみる ~ ベルゲン(ノルウェー)~
(写真2) グリーグの作曲小屋。ピアノの椅子の高さを調節するために、ベートーヴェンのソナタの楽譜をお尻に敷いていることを、地元ガイドは強調する。ドイツで音楽を学んだグリーグの、中央ヨーロッパと北欧の微妙な力関係への思いは、ベルゲンの人々の思いでもある。
(写真3) 作曲小屋から見える景色。筆を休めてこんな風景に身をゆだねたグリーグ。
『ろここ通信』 バックナンバーより from the back issue 98
ろここ通信 No.98 ~ Since 1987 ~ Sep.2020
前号の時とは世の中が大きく変わり、人類すべてがコロナ禍という大きな試練に直面しています。我々音楽家にとっても大変厳しい時世となる中、長年のご支援への感謝の思いを込めて、最新号を発行しました。アクセスいただき、ありがとうございます。
このような状況の中、ありがたいことに、毎年担当させていただいているムラマツフルートの楽譜が予定通り刊行となりました(下記参照)。仕込みは緊急事態宣言のさなかの時期、リモートも活用しながらの原稿のやりとりでした。
恒例の音出し(試演チェック)は宣言解除直後に、感染防止対策を念入りにしながら決行。最終の校正は、社内に缶詰め状態でしたが、途中ランチを買いに外に出た時、ちょうどブルー・インパルスの医療従事者への感謝飛行に遭遇できました。目の前が大学病院という地の利ゆえのことだったようですが、20年来ご一緒している編集者O氏にこのことを伝えると、「子供のころからあこがれだったブルー・インパルス、僕も見たかった!」と男子らしい反応でした。
今回のオリジナル曲「降りつもる秋」は、ごく初期の頃に歌の曲(「葉の調べ」)として発表したものですが、何かが降りつもるような秋という季節に、冬支度をするように心の奥で何かを整えて、ゆったりと良い時を待つイメージです。効率と時短が先行してきた時代も、ここで大きな振り返りが求められ、「じっくり待つ」という魂の器を鍛えるような行為が求められているのかもしれません。そしてそれは、音楽作品としっかり向き合えるチャンスなのでしょう。今年はベートーヴェンの生誕250年というアニバーサリー・イヤーですが、コンサートが目白押しといった今までの祝い方とは全く違う向き合い方を、それぞれの立場で音楽家たちはみな、問い続けているのだと思います。
------ ------ 新刊楽譜 ◆ ムラマツ オリジナル シリーズ Vol.74 ◆ ------ ------
♪メヌエット Tempo di Menuetto Op.49-2 (ベートーヴェン/ 七瀬) フルート二重奏
♪悲愴ソナタ2楽章 Sonate "Pathétique" Mov.Ⅱ (ベートーヴェン/ 七瀬) フルート三重奏
♪降りつもる秋 Autumun getting into full swing (七瀬あゆこ) フルート三重奏
全曲スコア,パート譜付き 税込¥1,650 お申し込みは、村松楽器 03-3367-6000 まで!
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このサイトでは、トップ・ページのブログ・コーナーに、随時コロナ禍の時代を見つめる記事を掲載していますが、そのほかにもいろいろな記事で、この時をいかに過ごしてゆくかという問いを投げかけてきました。日頃サイトをご覧くださっている方々には、おなじみかもしれませんが、紙媒体読者のために抜粋した記事を以下にご紹介したいと思います。
まずは、マスク必須でリアルな会話もままならない中、ならばいっそ自分の声に耳を傾けてみようという、「声の魅力が叶えるもの」。
そして、おうち時間の王道と言える読書。実は私と音楽とのかかわりには、こんな読書体験が大きく作用しているという、「私のアレンジ 『もうひとつの原点』」。
さらには、特に紙媒体時代からの読者の方々にはおなじみの河合隼雄先生が登場される、「作曲と編曲、どこが違う?」。今の時世に河合先生がご存命なら、どんなメッセージを発せられただろうかと最近しきりに考えます。たぶん、安易に皆が前向きになりましょうという推奨は決してされず、それぞれの不安にどう向き合ったらいいのか、独自の目線で鋭い示唆を投げかけて下さっただろうと想像しています。そのひとつが、きっとこの「無意識との対話」ではないかと。
お楽しみいただければ幸いです。
写真(1) ウィーン中心部にある、ペスト終息を記念して建てられたペスト記念柱。
写真(2) ウィーンのベートーヴェンの住まいだったパスクァラティ・ハウスに展示されている、若きベートーヴェンの胸像。どちらも2018年12月撮影
◆声の魅力が叶えるもの Comments ← click! 「音楽 物思い」コーナーへ
◆私のアレンジ「もうひとつの原点」 Comments ← click! 「編曲(アレンジ)のおはなし」コーナーへ
◆作曲と編曲、どこが違う? Comments ← click! 「編曲(アレンジ)のおはなし」コーナーへ
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『ろここ通信』 バックナンバーより from the back issues 96&97
ろここ通信 No.97 ~ Since 1987 ~ Dec.2019
日頃のご支援に感謝を込めて、最新号をアップいたします。アクセスありがとうございます。
ウィーンで新年を迎えた今年は、同じ横浜市内の仮オフィスへの移転(8月)を含めた、大きな変化を伴う「怒涛の一年」でした。デンマークで進行中の拙作をめぐるプロジェクト(詳細はまだ内緒)を進めるために、夏と秋に現地へ渡航。7月は初めての北欧の夏となり、その歌うような朗らかな夏の風情にうっとりしました。現在、新作発表を含めたガラコンサートの企画を進めているところです。
★Webのブログ風コーナー”ブラフの丘から” より
2019.7.30 Tue. …(7月のデンマークは)日本の初夏のような快適な気温。秋冬とは、空が違う、雲が違う、光が違う、空気が違う…短い夏をいとおしむように、水辺で過ごすコペンハーゲンの人たちの表情は本当に喜びに満ちていて、幸せな気持ちになりました。北部の町オールボーは、夏の時期でも気温の上がらない日があるようで、薄いダウンの上着が手放せない様子。ユトランド半島突端のリゾート地スケーエンはあいにくの雨模様でしたが、長く続く砂浜とヒースの茂る丘という、この地ならではの景色を楽しむ自転車族に中高年が多いのに驚かされました。
(写真4:コペンハーゲンのあるシェラン島東部のベルビュー・ビーチにある監視塔。デンマーク・デザインでおなじみのヤコブセンの作品。)
★新刊楽譜発売中です!
楽譜というのは、長く残るものであり、様々な演奏者に作品を育てて頂けるので、作品発表には最も確かな手段と言えます。長年かかわらせていただいている、ムラマツ・オリジナル・シリーズは、世界屈指のフルート大国日本だからこそできることで、たくさんのプロアマ問わないフルーティストの方々に、今もどこかで奏でて頂いているであろう、人気シリーズです。
楽譜を日頃使う習慣のない方々には、楽譜が使われる演奏や録音というプロセスを経て、初めて耳に入るわけですが、これが私の予測のつかない思わぬところで起こったりします。先日も親しい筋から、フルート・アンサンブルの演奏会にたまたま出かけたら、拙作の『四季の抒情歌メドレー~故郷へのオマージュ』をやっていた!というメールを頂きました。プログラムには、作者の名前をきちんとクレジットして頂いていることが分かり(そうでないことも多々ある)、丁寧な扱いをありがたく思いました。
楽譜ユーザーの方の中には、私がプロのフルーティストだと信じてやまない方もおられるようで(照笑)、いつ演奏会で吹くんですかと聞かれることもありますが(吹きません)、書くときは必ず楽器を吹いてみて、無理がないかチェックすることは怠りません。あえて言うと、私の譜面は「フルーティスト自身が書いた楽譜にはない客観性」が売り、というところでしょうか。
内容については、毎回編集部と綿密な検討を重ねて路線を出すのですが、今回の新刊は、「人間と人間以外の組み合わせのロマンス」がテーマになりました(エッ?と思われる方はぜひ楽譜の解説をお読みください。)。
フレンチカンカンでおなじみの『天国と地獄』の作曲者オッフェンバックの生誕200年にちなんでのちょっとユーモラスな曲と、私の大好きなドヴォルジャークの作品から、アンデルセンの『人魚姫』にも似たストーリーを持つオペラ『ルサルカ』のアリア、そしてオリジナル曲は、‘87年初のオリジナル発表コンサートのオープニングで、シンセサイザーで演奏した思い出深い曲を、フルート用に少し味付けを変えてリメイク。
書いた音が実際どんな音になるかは、出版前にアンサンブルで音を出してもらって、しっかりチェックしていますが、実際に吹いてくださる演奏会などにお邪魔する時は、私もとても緊張します。でも、演奏を聴いているうちに、この上ない感謝の思いに包まれるのです。
~~~~~~ ♪ムラマツ オリジナル シリーズ Vol.71♪ 作編曲:七瀬あゆこ ~~~~~~
♪ 機械人形 オランピアの歌 ~歌劇「ホフマン物語」より (オッフェンバック/ 七瀬) フルート二重奏
♪ 八月のねがい (七瀬あゆこ) フルート三重奏
♪月に寄せる歌 ~歌劇「ルサルカ」より (ドヴォルジャーク/ 七瀬) フルート三重奏
全曲スコア,パート譜付き 税込¥1,620 お申し込みは、村松楽器 03-3367-6000 まで!
★【連載】 Gao Forever! (最終回) デンマークに ガオさん あらわる? “育ての親” 故・齊藤賀雄さんの思い出
→ サブページ Gao Forever! のページをご覧ください。
Gao Forever! のバックナンバーは、Gao Forever! のページに掲載されています。齊藤賀雄さんのプロフィールもあります。
----- 以下、紙媒体読者向けの記事紹介です。
(「ブラフの丘から」の記事は、通常2か月程度でサイトから消えます。)
★私の「アレンジの原点」 Comments ←click!(「編曲(アレンジ)のおはなし」コーナー)
★ブログ風コーナー “ブラフの丘から”より
2019.9.21 Sat. 先日の敬老の日には、親しくしている高齢者福祉施設で、拙作の歌を歌ってくれている社員有志の合唱隊とご一緒してきました。リハーサルは簡単な発声練習から始めて、気持ちと身体をほぐします。「ケアするときの最初の声掛け「○○さ~ん」で、気持ちが通い始めるあの感じ、あの気持ちで、聞いて下さるお客様に音楽を伝えてください。」とお願いしている私の方が実は、ケアの現場から学んだことなのです。そうお話しすると、皆さんの目が生き生きとしてきて、集中したいい演奏になりました。
ろここ通信 No.96 ~ Since 1987 ~ Mar.2019
Web版最新号にアクセスありがとうございます。
まずは昨秋の主催公演 (2018年11月17日(土) 音楽家から見た福祉大国デンマーク ~魂の歌を探して~ グランデュオ室内楽ホール 作曲・編曲・ピアノ 七瀬あゆこ クラリネット 兼氏規雄 チェロ 竹本聖子 /ナレーター 松下あや子)にご来場くださいました皆様、ありがとうございました。
本番前、妙な気負いに苛まれていたところ、「何ビビってるの?いつものようにやればいいんだよ」と、献奏した 故・嶺田健さんの声が聞こえ、本番が始まるとふっと楽になり、いつものペースを取り戻すことができました。奥様にそう言うと、「いたんじゃないですか?」。
アンサンブルで一番年下だった私も、今は年長になり、「この曲が好き」「また一緒に演奏したい」と言って、熱演してくれる仲間に恵まれているありがたみが、身に沁みます。
実例を出せない分、アンデルセンなどの「物語」の世界を借りているのは、今も著作の大ファンの河合隼雄先生の手法を見習ってのこと。それでも、架空の世界ばかりでなく、もう一歩踏み込んだところまで行けないかと、奮闘するこのごろです。
- - - - ✈ Field work デンマークのクリスマス ウィーンの新年 2018.12 & 2019.1 - - - - ✈
フィールドワークという言葉を、聞きなれないと思う方が多いと思います。旅というと、仕事か遊びか、白黒はっきりさせなきゃというのは、いかにも律儀な日本人らしい考え方かもしれませんが、どちらもありなのがフィールドワーク。
民族音楽学の大家で、大学時代の恩師 故・小泉文夫先生直伝のフィールドワークは、のびやかで人間愛に満ちていて、文化の本質を瞬間でつかむスキルが光る、素晴らしい世界でした。私もこのやり方で、発表した作品に縁のある土地を訪ねて、音楽の力にしてゆくことを続けています。
今回は、8回目のデンマークで北欧のクリスマスを体感し、音楽の聖地ウィーンで楽聖たちの足跡を追い、読響アンサンブルの理想のひな型と考えていた、ウィーンフィルのニューイヤー・コンサートの室内楽版を堪能してきました。また、下のコーナーで紹介している新刊楽譜を、ウィーン国立音楽大学で所蔵していただきました。
日照時間7時間という、暗くて寒い12月のデンマーク。家の中でいかにして心地よく過ごすかを考えざるをえない環境だから、家々の窓には落ち着いたお洒落な照明があちこちに。町中の店が閉まるイブから3日間は本当に静かで、音楽は教会のミサが中心。石造りの建物に響くコーラスを聴きながら、なぜか子供の頃のクリスマスを思い出していました。
Webのページ「Field work」海外編から
♪エリーゼのために♪ ウィーン(オーストリア) "Für Elise" (3flutes) MOS No.44
(紙媒体向け読者のためのwebページ紹介ですので、記事は Field work こちらをクリックしてご覧ください。写真2と3 はこのコーナーで新たに追加したものです。)
~~~~~~♪ ムラマツ オリジナル シリーズ Vol.68 ♪ 作編曲: 七瀬あゆこ ~~~~~~
♪ 連禱 (シューベルト/七瀬) 2Fl.
♪ フルート・トリオのための「鱒」(シューベルト/七瀬) 3Fl.
♪風のインテルメッツォ(七瀬あゆこ) 2Fl.
全曲スコア,パート譜付き 税込¥1,620 (2018年刊)
ご購入は、村松楽器のサイト www.muramatsuflute.com または ☎ 03-3367-6000 まで!(バックナンバーあり)
シリーズ第21作目は、シューベルトの作品を取り上げました。地味ながら美しさが際立つ歌曲「連禱」は、日本のお盆のような意味合いを持つヨーロッパの「万霊節」のための音楽で、死者の霊魂に祈りを捧げるものです。「鱒」は、ピアノ五重奏でよく知られた作品を、フルート3本のダイジェスト版にという、引き算アレンジの極みに挑戦!年末のウィーンでは、シューベルトの生家(記念館)へ行き、大きな肖像画の前のオーディオ・コーナーでこの原曲を聴きながら、涙が出て困りました。「風のインテルメッツォ」は、’88年に歌で発表した作品を、フルート版にリメイク。息の楽器フルートには、風のイメージがしっくり来るようです。
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★連載記事 Gao Forever! “育ての親” 故・齊藤賀雄(よしお)さんの思い出 は、紙媒体の紙面の関係で今号はお休みです。次回は、没後丸9年を迎え、いよいよ締めくくりの最終回になります。どうぞお楽しみに!
----- 以下、紙媒体読者向けの記事紹介です。
(「ブラフの丘から」は、通常2か月程度でサイトから消えます。)
★ブラフの丘から (トップページ ブログ風コーナー)より
2019.3.5 Tue. 音楽の仕事というのは、実は結構体力勝負で、食には気を配る必要があると常々思っているのですが、昨日、30年余り愛用してきた包丁の修理が上がり、受け取ってきました。
亡き父から譲り受けた、ヘンケルスの包丁。柄の部分が割れてきても捨てられず、何とか復活できないかと、地元の刃物専門店に持ち込んだところ…「結構上手に研げているねぇ。大丈夫、まだまだ使えますよ!」。プロの研ぎ味は、それはそれは素晴らしく、あれこれ切っては感動の連続、味も変わる気がして、もう病みつきです(笑)。
★「忙しがらない」という知恵 Comments ←click! (「音楽 物思い」コーナー )
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ろここ通信』 バックナンバーより ----- from the back issues 94&95
ろここ通信 No.95 ~ Since 1987 ~ Aug.2018
最新号をお届けします。前号およびトップページで予告しておりました主催公演、都合により時期変更となりましたこと、心よりお詫び申し上げます。新たに日程調整ができましたので、そのお知らせを兼ねた最新号となりました。ご予約受付や、お申込み方法などの正式なご案内は改めて9月中旬以降に、トップページでご案内いたします。(当方では予約受付いたしませんのでご注意下さい。)
毎回ご予約のみで締め切る(当日券なし)状況ですので、お早めにご検討頂ければ幸いです。
ナレーター (未定)
(紙媒体読者向け Web記事紹介コーナー)
★楽譜から広がる「音楽リテラシー」 Comments ←click!(「音楽 物思い」コーナー)
今回のメインの特集記事はこちら
★福祉大国デンマーク 「魂の歌」を探して(2017) Denmark ←click! (デンマークへの旅(3)コーナー)
デンマーク現地取材2017年のレポートは、デンマークらしい「替え歌」文化のお話。こんな歌で人生の節目を祝ってもらえたら素敵だと思いませんか?
★【連載】 Gao Forever! (14) 幻のビータ・グルメ ”育ての親" 故・齊藤賀雄さんの思い出
→ サブページ Gao Forever! のページをご覧ください。齊藤賀雄さんのプロフィールは、コーナーの冒頭にあります。
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ろここ通信 No.94 ~Since 1987~ Dec. 2017
9月下旬からの海外フィールドワーク、今年はノルウェーのオスロとデンマークのコペンハーゲンを中心に、コペンハーゲンに隣接するスウェーデンのマルメも一日だけ訪れ、充実した日々を過ごしてきました。
3回目のノルウェーですが、首都オスロは、過去に訪れたベルゲンとはまた少し趣きが違い、町のあちこちに彫像が佇む美しい町。フィヨルドのなかに息づく土地の空気感のすばらしさに魅了されました。音楽ばかりでなく、絵画や彫刻などの芸術にも、根底にこのオスロ・フィヨルド(写真1)のトーンが流れていることを感じ、ノルウェーを代表する画家ムンクの「叫び」なども、怖い絵だと思っていたのが、すっかり見方が変わりました。
また、ノルウェー国立音楽大学と、ノルウェー国立図書館で、ノルウェーの作曲家グリーグの編曲作品を含む楽譜(MOS35)ほかを、所蔵して頂きました。ヨーロッパの音大や図書館でいつも感じるのは、編曲作品に対する意識の高さです。私が遠い日本から来たお客さんであることを差し引いても、編曲ということを大切に扱い、つまりリスペクトしてくれるということ。
(スタッフ)「フルート・アンサンブルで?あら、面白いわね。」(私)「元のピアノだけでなくこういう編成で演奏することで、より深く、親密な気持ちでグリーグを理解できると思って作りました。」こういうやりとりに自然になるのは、やはり文化の伝統の厚みなのだと思います。
デンマークの王立音楽アカデミーでは、5年前お世話になったライブラリアンのイエンセンさんと再会。所蔵して頂いている楽譜の様子を見せて下さり、丁寧に補強して製本し、よく分かる場所に大切に置いて下さっていて、これも感激でした(写真2)。王立アカデミーのライブラリーの様子は、トップページ下部の旅のコーナー Copenhagen 2017 Oslo(Norway) でも、写真で12/25頃までアップしています。
また、今回のメインである、デンマークの歌文化を訪ねる取材(通訳入り)は、デンマーク人が個人の記念日に歌う「替え歌」がテーマ。歌詞作成を仕事として請け負っているジャーナリストのラウ・イスホイさんとの刺激的かつ心温まるひとときについては、紙媒体に先行してwebにアップする予定です。どうぞお楽しみに!
★ムラマツ・オリジナル・シリーズの楽譜、私の担当は今回で20作目になります。「世界のムラマツ」さんゆえ、フルート大国日本を支えるムラマツ・メンバーズクラブという大きな会員組織を擁することができ、その季刊誌と同時発行の楽譜は、クラシック系のものでは破格の発行部数1シリーズ約一万部というもの。このVol.65は、この夏に開催された、日本フルート協会主催の4日間にわたる大規模なコンヴェンションで、村松さんの宣伝コーナーで演奏されるための曲目が主になっています。
蝶々夫人が初演されたのは、イタリアのミラノスカラ座。そこで首席奏者を務められている、マルコ・ゾーニさん(写真3 中)と、ボローニャ歌劇場首席のドメニコ・アルファーノさん(写真3 左)という、当代の最高峰の演奏家による演奏ということで、願ってもない機会に張り切って書いた作品。プッチーニは、私と相性のいい作曲家だと思っていましたが、彼らの愛情のこもった演奏には大感激!イタリア人らしい、真のカンタービレcantabileの世界にしびれました。
「ぜひイタリアでも演奏したい」と、ゾーニさん。自らも編曲を手がけられる彼の深い理解に支えられた当日の熱気が、写真から伝わってくると思います(8月19日 昭和音楽大学にて)。
~~~~~~ ♪ムラマツ オリジナル シリーズ Vol.65♪ 編曲: 七瀬あゆこ ~~~~~~
カロ・ミオ・ベン Caro mio ben (2Fl.) (T.Giordani/ Nanase),
マダム・バタフライ奇想曲 Capriccio on "Madama Butterfly" from Japan (2Fl. Pf.) (G.Puccini/ Nanase)
全曲スコア,パート譜付き 税込¥1,620
★次回の主催公演は、(都合により開催時期を変更しました。)
音楽家から見た福祉大国デンマーク ~魂の歌を探して~
詳細は、決まり次第告知いたします。
★【連載】 Gao Forever! (13) スキーで音楽談義 ”育ての親" 故・齊藤賀雄さんの思い出
→ サブページ Gao Forever! のページをご覧ください。
紙媒体読者向け Web記事紹介コーナー
★幸福感の扉を開く「残存能力」という見方 (「縁あって、デンマーク」より Denmark (←ここをクリック) のページ)→ 4月の主催公演の内容の一部を、ご紹介しています。
★ふだん着の音楽に耳を傾ける(「フィールド・ワークについて」より Field work のページ )
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これ以前のバックナンバーは、Archive (←ここをクリック)のページをご覧ください。